【木造住宅】屋根を支える骨組み!小屋組についての基礎知識と構造上の注意点【初心者向け解説】

2024年 07月09日

前回の記事では、屋根の基本構造と主な用語について概説しました。
前回の記事「【木造住宅】屋根の構造とは?【初心者向け解説】」はこちら >>
そこで今回からは、それぞれの要素について一歩踏み込んで紹介していきたいと思います。
今回は家の屋根を支える骨組みである「小屋組」と呼ばれる構造についてです。

小屋組はなぜ重要なのか

屋根は風雨や太陽光から私たちの暮らしを守るために必要な設備です。
頑丈な屋根を作るためには、屋根を支える構造があります。一般的な住宅であれば、下地構造体、野地板、ルーフィング、そして屋根材からなります。例えば、日本で昔から用いられてきた和瓦は一枚3キログラムほどの重量がありますので、それらが何十枚、百枚と屋根を覆っていったとき、屋根の重量が非常に重くなることは想像に難くありません。
その重さを支えるためには、頑丈な骨組みが必要になります。そして、その重さを支える構造が、小屋組(こやぐみ)と呼ばれるものです。

図1 小屋組
画像出典: 桑村仁ほか(2011),『建築構造』,実教出版株式会社,p61

和小屋組と洋小屋組

小屋組みは大きく分けて「和小屋組」と「洋小屋組」の二種類があります。
これら二つは、共通した部分も多いものの、強度の補強方法が大きく異なります。

・和小屋組

(和小屋組のイメージ画像。下部分にある梁から短い小屋束が伸びており、棟木と呼ばれる屋根の頂点の材を支えている)

一つ目の和小屋組は日本の多くの家で採用されている様式になります。
梁(小屋梁:こやばり)に「小屋束:こやづか」と呼ばれる垂直の柱が格子状に立ち並び、屋根を直接支えているのが特徴です。このようなシンプルな構造から、和小屋組は施工が比較的容易であり、それに伴うコストパフォーマンスの高さから、多くの家で用いられています。

京ろ組と折置組

和小屋組は垂直の柱で屋根を支えるシンプルな構造ですが、実は京ろ組と折置組といわれる2つの組み方があります。
その違いを作るのは、梁と軒桁の位置関係です。
軒桁とは、地面と平行に設置される材のうち、外壁の柱の付近に設置されるもので、屋根を外壁で支えるための材です。
すなわち、京ろ組では梁が軒桁より上に配置される(すなわち、軒桁ではなく梁で直接屋根を支えている部分がある)ように組まれるのに対し、折置組では反対に、梁の上に軒桁が乗っていて、梁は間接的に屋根を支えているのが折置組です。
現在、住宅を建てる上では京ろ組がメジャーになっています。折置組の方が強度は高く、安定していますが、施工の難しさや、構造上梁が外壁から飛び出してしまう構造上の制約などから、現在用いられることは多くないようです。

図8 京ろ組
図9 折置組
画像出典: 桑村仁ほか(2011),『建築構造』,実教出版株式会社,p64

・洋小屋組

 (洋小屋組のイメージ画像。斜めの方杖を挟む形で束が設置される)

洋小屋組は、その名の通り、欧米風の住宅を作る際に使われてきた骨組みです。梁(陸梁:ろくばり)と束で屋根を支えるところまでは一緒ですが、洋小屋組では「小屋方杖:ほうづえ」と呼ばれる斜め材を使って強度を補強します。そのため、束や梁で四角形を作るように構成された和小屋組に対して、洋小屋組は「三角形」が特徴であるといえます。この三角形の構造はトラス構造と呼ばれ、強度に優れることから、橋や体育館などの大型施設でよく用いられるものです。
細い柱でも高い強度を作れる反面、施工の難易度が高く、コストもかかることから、和小屋組ほど普及していません。

真束小屋組と対束小屋組

洋小屋組にもバリエーションがあります。
真束小屋組は、これまで見てきた画像のようにその名の通り屋根の中心を支える柱(真束)をしっかり陸梁まで下ろし、そこからトラスを作っていくやり方です。これはその構造上、比較的和小屋組と近いといえるでしょう。
一方の対束小屋組は、真束を下まで下さず、対になるように配置した柱(対束:ついづか)を中心に、屋根最上部の重さを左右に完全に分散して重さを支えるものです。対束小屋組は施工が難しいものの、屋根中央部にスペースを作るため、そこを、屋根裏やロフトスペースのような居住空間として活用することができます。こうした構造が可能になるのも、強度に優れた洋小屋組の大きな強みであると言えます。

小屋組を考えるときに注意すべき点

小屋組は屋根のデザインを考えるうえで最初に考えるべき部分であると同時に、構造的にも非常に重要な部分です。そのため、さまざまな点に注意を払う必要があります。

・勾配(こうばい)

一つは、屋根の傾斜(勾配)をどれほどにするかということです。というのも、屋根の角度は防水性や耐風性などの実用面にも直接影響するためです。
建築の世界では、この屋根の勾配を角度ではなく長さの比で見ます。そして、それを〇寸という形で表記します。この〇には2や5など数字が入るのですが、これは屋根の勾配を直角三角形に見立てて、その底辺と高さの比でもって決めているのです。
例えば、底辺(梁)が10に対して真束(しんづか:屋根の頂点の柱である棟木を支える柱です)の長さが4であれば4寸勾配(角度に換算すると約21.8°)です。
なぜこの勾配が重要になるかというと、この勾配はその家が建っている立地に基づいて考えなければならないためです。例えば、雪や雨の多い地帯であれば、屋根の勾配を大きくして防水性を上げることは有名です。あるいは、風が強い地域では、屋根の勾配を緩やかにすることで空気抵抗を減らし、耐風性を高めます。
また、この小屋組の角度は使う屋根材によっても制約を受けます。例えば、金属屋根であれば比較的緩やかな傾斜から設置できますが、現在一般的になっているスレート材(コロニアルと呼ばれるもの)や瓦は構造上よりきつい勾配を必要とします。
湿潤な日本の住宅では防水性の観点から4寸以上の勾配を付けることが一般的でしたが、最近は部材の防水性能の向上などにより、より角度の小さい屋根も徐々に用いられるようになっているようです。
屋根材は材質や形状によってメリット・デメリットがあるため、こちらも気候などに影響を受けます。したがって、例えば新築などで、屋根材をデザイン性などから決めたい場合は、地域の気象を鑑みたうえで、それに適した勾配を設定する必要があるということを理解しておくとよいでしょう。

・谷(たに)

もう一つ注意したいのが、屋根の構造上生まれる弱点です。

例えばこの画像の大きな屋根は、二つの屋根がくっついたような形状をしています。
この二つの屋根の接合部分は谷と呼ばれ、雨が降った際などは左右の屋根に降った水の両方がこの谷の部分を流れていきます。そのため、この部分は劣化が激しく、雨漏り等の原因になることがあります。
そのため、雨漏り防止の観点からいえば、こうした谷が生まれないような屋根の構造、ひいては小屋組の構造を作ることが重要です。また、新築のみならず、中古物件や賃貸物件を検討する場合も、こうした点を注意してみていくことで、屋根にまつわるトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

まとめ

小屋組は家全体で屋根の重量を支え、私たちの快適な生活を支える重要な存在です。
雨漏りをはじめとした屋根トラブルが起こっているような時には、こうした下地や骨組みにもダメージが入ってしまっていることもしばしば。そうなる前に、定期的なメンテナンスを行っておきましょう。
そんな折は、ぜひ株式会社東京サービスにお気軽にお問い合わせください。

著者情報

株式会社東京サービス

株式会社東京サービスは東京多摩地域を拠点に、屋根や外壁、雨樋の工事をはじめとした各種工事の施工に携わっている小さな会社です。
国立市で創業70年以上の歴史を持つサトウグループの一員として、地域のお客様の様々なニーズにお応えしています。
本ブログでは、業界未経験の新入社員Mが、屋根工事やその他工事について様々なことを勉強し、わかりやすい解説をモットーに、備忘録的に書き記していきます。
もちろん、掲載に当たっては経験豊富な先輩たちに内容の監修をいただいていますのでご安心下さい♪